心理学療法➕音!「音楽療法とは」その2!!
⑹音楽は発散的であり、情動の直接的発散をもたらす方法を提供する。
音楽が感情表現の手段であることは、昔からよく知られていることである。
言語表現は、より明確な意味を伝達できる手段であるが、言語化しにくい情動や欲求が、
発散されないで蓄積されるという現象は、日常よく見られることである。
音楽は、それが短時間でしかも適切な方法で発散できる手段になる。
またある程度発散されることによって、情動や欲求が自己自身に受け入れられ、
言語化しやすくなるというメリットも見逃せない。
こうした働きが、心理療法としての音楽療法の大切な柱の1つになるわけである。
⑺音楽は、身体的運動を誘発する。
すでに、生理的な働きの項で述べたので説明は省略する(身体でリズム)が、身体運動と効果的に
結合させることによって、音楽療法はより大きな効果をもたらすことが多いので、
技法的には様々な工夫がなされている。
⑻音楽はコミュニケーションである。
音楽の重要な柱の1つは、音による交流が可能なことである。音楽は世界を結ぶなどと
よく言われるが、言葉や国境を越えて、音楽が様々な気持ちを交流させる上での手段になる。
しかし、言語に比べて、音楽的交流は曖昧さをもっていることは注意すべきことである。
すなわち、曖昧であるが故のメリットと、デメリットがあるということである。
音楽による交流の方法としては、声と声・声と楽器・楽器と楽器・音楽と身体表現などの
アンサンブルによる方法と、演奏を聴く(聞かせる)ことにより、何らかのメッセージを
送る(受け取る)といった方法がある。筆者がよく使う方法は、楽器と楽器の即興演奏を
しながら交流していく方法であり、集団音楽療法では、その状況を他のメンバーは聞きながら
物語を構成して、演奏者にフィードバックするという方法をよく用いる。
これは、演奏者は自分の気持ちを、もう1人の演奏者に送りつつ交流する、
周囲の聴いている人たちは、物語の中に自分の気持ちを投影するという二重の投影法になる。
⑼音楽は一定の法則性の上に構造化されている。
どんな原始的な音楽でも、何らかの法則性をもっている。たとえコップや皿などを叩いたとしても
そこには一定のテンポやリズムが存在するのが普通であろう。
メロディーを即興的に口ずさんだとしても、そこには1つの流れが自然に生まれることが多い。
この法則性は、もともと人間の中にある法則性に由来するもであり、
ホメオスターシス(homeostasis)の法則に支配されるものと考えられる。
人間が生まれてから、この法則性はしだいに複雑なものに発達していくわけであるが、
常に均衡を保とうとするところに生体の特徴を見ることができる。
これがホメオスターシスの法則と呼ばれるものであり、ピアジェの言葉を借りると、
「同化と調節を繰り返しながら、より高次のホメオスターシスを獲得していくのが発達」と
いうことになる。音楽活動をすることよって、より高次のホメオスターシスを形成していく援助を
するのが発達療法的音楽療法の原理である。また適切なホメオスターシスが崩れて、
不適切なホメオスターシスに陥っている人たちに、より適切なホメオスターシスを
再形成する援助をするのが、精神障害への音楽療法の原理という事もできよう。
いずれにしても音楽の持つ法則性は、発達に障害を持つ対象者や精神障害者、高齢者などの
音楽療法の際に、非常に大切な治療要素になるものである。
以上が音楽の治療道具としての特性ですが、最も基本的な音楽の特性は、聴覚を基盤にした活動であり、
そして視覚とも運動とも言語とも結びつきやすい性質をもっているということだと思います。
さらに、昔から言われているように、音楽は時間の芸術であり、基本的には、テープレコーダーやビデオなどで
再生できたとしても、表現した瞬間に過ぎ去ってしまうという性質は変わりません。
よって、一瞬一瞬その聴いている時間の心理への影響力は偉大だと思いますし、
こうした音楽の特性は、いろいろな形で音楽療法の治療として、個々の心理へ深く影響を与え、
心の安定や回復に大いに役立つと思います。
以上、音楽療法入門 20150904(1998年発行図書)より抜粋し、
掲載させて頂きました。
最後まで読んでいただきまして有難うございます!!
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